不良リーダーの懸命なる愛
第六章

アプローチ

時刻は午後4時過ぎ…。



日は傾き、夕日が窓から差し込んでオレンジ色に染めあげていた。


私と霧島くんはその後も勉強に専念し、
霧島くんのおかげで私は期末テストの範囲内もバッチリ教わることができた!



「ありがとう、霧島くん!凄く助かりました!霧島くんのおかげで成績が上がりそうです!」


「そ?なら良かった。」


教え方も抜群に上手な霧島くんのおかげで、英語の苦手な私も理解するのが早くなり、思ってたよりも早く勉強会を終えることができた!


本当に有難かったなぁ…。


霧島くんのおかげでだいぶ分かるようになったし!


霧島くんが私にブレザーの “お礼” として勉強を教えてくれたけど、
凄くためになったし、お礼以上のことをしてもらった感じがするな。



…あ!!




そうだった!!


「霧島くん!あの、コレを!ブレザー有難うございました。」


紙袋に入っているおろしたてのブレザーを彼に渡す。


「あ、そっか。忘れてた。わざわざありがとな?」


「い、いえ!こちらこそ!!今日は本当に有難うございました!霧島くんも期末テスト前なのに、わざわざ私に勉強を教えてくれて…。」


「ハハッ。咲希はかしこまり過ぎ。俺たちの仲だろ?それにテストなんてのも、別にソレが人生の全てじゃねぇし。順位で人の価値決まりゃ~世の中苦労しねぇしよ。だから気にすんなよ?」


「あ、ありがと!」



霧島くん!



なんて心の広いお方!!



そして義理と人情をわかってらっしゃる!!



しかも今の言葉は名台詞だよっ!



あとでちーちゃん達に教えてあげよっ!


「じゃあ、とりあえず出るか。」


「ハイ!」


なんだか気分が高揚して、足どりも自然と軽くなった。






図書館を出て、建物の出入り口に差し掛かったとき。



あ!



いい事思いついた!



「き、霧島くん!あの、外へ出る前にお手洗いに寄ってもいいですか?」


「ん?便所か。ココで待ってるから、ゆっくりどうぞ?」


「!!またからかってっ!!そ、そんなんじゃないんですからね!?」


「ハイハイ。いってらっしゃい。」


もう!!



霧島くんは壁に寄りかかって、クスッと笑うと携帯を取り出して待つ態勢になった。



よし!



今のうちに……。




そして私が向かった先は、自動販売機。


霧島くんにかなり勉強教わっちゃったからな…。


これくらいはしないとね!


彼の分の缶コーヒーを買い、急いで霧島くんが待つ場所へ…!



あ、いた!



「霧し…」


彼に声をかけようとした時だった!



あれ……?



誰かと一緒にいる??



よくよく見ると霧島くんの周りには数人の男子がいて、何やら話している様子。


誰だろ?


制服着てるから高校生だよね?


でもうちの学校の制服じゃないし、友達かな?



すると声が聞こえてくる。


「理人さん、本当にお久しぶりです!まさかこんなところで会えるなんて!!」


「マサもあいかわらず元気そうでなによりだな。」


「マサ!この人が噂の霧島理人さんか!?」


「感激ッス!あの100人シメアゲの伝説の方に会えるなんて!!!」



え”!?



し、締め上げ!??



締め上げ……って、

つまり喧嘩で勝ったって事!?




100人相手に!!?



それを聞いて私は呆然……。



友達はかなり盛り上がっているようで……。



そんな中、霧島くんが質問する。


「ところでマサ達は何しにココへ来たんだ?」


「ハイ!実は俺ら、学校で喫煙してんの先公にバレちまって。それで罰として今みてきた……『カリノえいとく展』ってやつの感想書けって言われて!」


彼らが訪れた美術館のほうに視線を向けると、

『画人、狩野永徳 展』というポスターが大きく貼ってあった。



これは…カリノじゃなくてカノウと読むのでは……。



「で、それを行かねえとトイレ掃除半年って言われたんで!だから昨日感想文のシメキリだったんで、今日みに来たんスよ。」



ん!?



昨日締切なのに、今日来たの!!?



なんか矛盾してない!?


「そうかよ。じゃ、早く帰って忘れねぇウチに感想文書くんだな。俺はちと用があっから。」


「理人さん、用があるんですか?」


「まさか霧島さん、この後誰かと喧嘩ッスカ!?スゲー!イカス!」



あ……。



そろそろ私、行ったほうがいいかな?



霧島くん待たせちゃってるし。



そう思った時だった。



「アレ!?あそこに居んの……桜子さんじゃね?!」



と一人の友達がそう言うと、外に向かって手を振りだした!



「オーイ!!桜子さぁーん!!!」



ちょうど出入り口の自動ドアが開いていたので、彼の声は外にまで届いた。


すると、3人の女の子が中に入ってきた。


また霧島くんの友達かな…?



「桜子さん!憧れの霧島さんッスよ!」



え?



友達じゃないのかな??




私はまたその場から動けず、しばらく見守ることに。



「え!!!ウソ!!霧島理人くんだ!!感激っ!!アタシ中学のときからファンで、学校が違うから遠くからしか見たことなかったから超嬉しい!!」


女の子達は霧島くんに近づき、だいぶ興奮している!



はぁ~!なんか凄いんだなぁ!



霧島くんの認知度って!



感心して見ている私。



でもよく見ると……。



ん?



霧島くん、なんだかあまり嬉しそうじゃないみたい…?



「桜子さんは、ウチの学年のマドンナなんですよ、理人さん!」


「そうそう!マサに霧島さんに会いてぇってずっとせがんでたんスよ!」


そして一人の女の子が霧島くんに近づくと、


「ねぇ、霧島くん!桜子に連絡先教えてもらえないかな?この子、本当に霧島くんのこと大好きなんだ!」


と、必死にお願いしている!



「ヤダぁ!大好きなんて霧島くんに言わないでよ!」


「だって本当のことジャン!ね?いいでしょっ!?桜子めっちゃ可愛いもん!霧島くんと仲良くしてもらえない?」



な、なんか、



みんな勢いが凄くて見てるこっちが圧倒されちゃうな~。



でも確かにあの桜子さん…っていう女の子。


可愛くて、TVに出てきそうなアイドルみたいだな~。



すると霧島くんの返事は……。



「悪いけど断る。俺ヘタに番号教えない主義だから。」



ハッ!



断られた!!



「そうなんだよ、桜子さん。理人さんは女子にはなかなか教えないんだ!だからまた機会があれば会ったらいいんじゃないか?」


と、マサという人がその場を収めようとする。




が……!




「そんなこと霧島くんのファンならみんな知ってるよ!!そんなのはある意味試練だしっ!」


と、めげないようで。



「霧島くん!アタシと霧島くんって、決して釣り合わないようには見えないでしょっ!?だから周りも納得するとおもうの!だから、アタシと付き合って?お願いっ!!」



………え!!?




これって……………





愛の告白じゃ!!?




初対面なのに愛の告白って凄い勇気だな!!



「悪いけど無理。」



即答されたっ!!!




「俺ツレがいるからもう行くな、マサ。久しぶりに会えてよかったよ。じゃあな。」


「え!?あ、はい。理人さんもお元気で……。」


「……え!?ちょ、ちょっと待って!!霧島くん、アタシの話をきいてってば!!!」



桜子さんという子が、霧島くんの腕を強引に掴む!



「オイ。いいかげんにしろよ?離せ。」


「ダメ!!アタシの話を最後まで聞いてくれなきゃ離さない!!」


「最後まで聞いたダロ?聞いた結果は、無理。そういうことなんだよっ!」



ひぇ!



霧島くんが苛立ってる!



ま、まずい!!



とにかく霧島くんの元へ行こう!!



意を決して私は小走りで霧島くんの元へ急いだ!
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