不良リーダーの懸命なる愛

勘違い

「いいかげん離せよっ。」



「イヤッ!せっかく会えたんだもん!!こんなチャンス二度とないんだから!!」



も、揉めてらっしゃる!!




急いで霧島くんの元へ駆け足で行くと、
霧島くんがこっちを向いてくれた!



あ!



気づいてくれたかな?


「き、霧島くん!お待たせしましたっ!」



すると一気に霧島くんの表情が変わる……!!



「咲希…!」




ドキッ




あわわ。




な、なんだろ!?




またドキドキしてきた!



「え………。何、このおんな。」


桜子さんが私に気づいて突き刺すような視線でジロジロ見てくる……!


「おい、もう離せ。お前につきあってる暇なんてねぇーんダヨ。」


そう言うと霧島くんは桜子さんから腕を振り払うと、私の側まで来てくれた。


「ん?缶コーヒー?咲希って珈琲飲むんだな…。」


頬をゆるめ、温かい眼差しで霧島くんは私を見つめてくる……!




うわ。




さっきの霧島くんとはまるで別人みたい…!


「いえ、あの、これは霧島くんにと思いまして!」


「俺に……?」


「は、はい!今日、勉強を教えてくれたお礼です!」


そう言って霧島くんにさしだす。


「マジかよ…!さんきゅ。スゲー嬉しい。ありがとな。」



あ……。



笑顔。



私もなんだか嬉しくて、頬がゆるんだ。




その時だった。





「あなた……。霧島くんのなんなの?」




え?!




桜子さん……と、2人の友達が気づけば私の近くにいた!



「わ、私ですか?!」



まさか話しかけられるとは思ってもみなかったので、
少し動揺してしまう!


「そう、アンタよ!霧島くんになんでそんな馴れ馴れしいのよっ!!」


「それにすっっごく地味だしっ!!可愛くもないし、霧島くんと全然釣り合ってもないし!」



クスクス…





あ、そっか!



私なにか誤解されちゃってるみたい。


「あの、私は霧島くんとは同じ学校の同級生の鳴瀬咲希といいまして、友達…」



「はぁ?!同高だからって何よ!!」


「あなたみたいなブスが霧島くんと仲良くしていいわけっ!?マジあり得ないから!!」


「そうよ!サッサと身を引きなさいよねぇ!!っこの地味女!!!」



うわ。



私、すごい言われようだな……。



酷いことを言われてるけど、その子達のあまりの勢いに圧倒されてしまい、
目を見開いたままその場で私は固まってしまった……!!





すると。






「てめぇら。今なんつった?」




え!!



霧島くん!!?




ゆらりとその3人の女の子たちの方へ霧島くんは体を向ける!





そして……!




「地味だと?俺に釣り合ってないだと? ーーッンなこと勝手にてめぇらが決めてんじゃねええぇぇぇーー!!!てめぇらのモノサシで咲希を測ろうとすんじゃねえぇぇよっっ!!!!今度咲希を侮辱してみろっ?オンナだろうが容赦しねぇっ……!!」



女の子達に向かって一喝した!!




ひぃぃ!!!




こ、怖すぎっ!!!!



霧島くんのド迫力の喝破に、3人共おもわず後ろへと下がってしまい、小刻みに震えてしまった……!




い、いけない!!



「き、ききき霧島くん…!もう、その辺で…いいのではないのでしょうか……?!あの、それに、私なら平気だから!うん、全然大丈夫!!」


なんとか霧島くんをなだめようと必死に取り繕う。


「咲希……。」


あ、こっち向いてくれた!



段々と殺気も無くなっていき、霧島くんの怒りも治まってきた。



ほっ…。



よかった、一件落着。




ヒヤヒヤして変な汗も出てきたけど、なんとか穏便に済んでよかったよ……。




ふぅ~。



と息をついていると、



「あ、あの~。……もしかして、理人さんの彼女さんっすか?」


とマサさんという霧島くんの友達が話しかけてきたっっ!!




…………………………え!??




か、か、かのじょ!??



すぐに反応できない私を見て、マサさんは肯定したと捉えたみたいで……。



「やっぱりそうなんすね…!あの理人さんをお止めになるとは!!やっぱり彼女さんじゃないとできない事ですもんね!!」


「マジか!!この方が霧島さんのオンナ……じゃなくて、彼女さんなんスカ!!!会えて感激ッス!」


「素敵なお人ですね!そして霧島さんのためにわざわざ缶コーヒーを……!!」


「なんて健気な方なんだっ!あ!!オイ、よく見てみろっ!!自分の分は買わず、理人さんの分だけを買っている!!これこそ一途さの現れだ!!」



オオォォ~。




え!!



なんか勝手に話が進んじゃってるよ!!!



これは弁解しないとっ!


「あ、あのですね、」


「お前らなに勘違いしてんだよ。咲希は俺のダチだ。」



あ、霧島くん!



霧島くんが私の横に立つ。



「え……。じゃあ彼女さんじゃないんすか?」


「ダチだな、……今はまだ。だから手は出すなよ?」




ん??




今は??




………どういう意味なんだろうか。





するとマサさん含め、不良仲間の全員がハッ!とした表情になり、
目が煌きだした!!



「そ、そういうことだったんですね!!理人さんは咲希さんに首ったけなんすね!?」


「なるほどっ!霧島さんの用ってこういうことだったんすね!!自分ら気が利かず、すいやせん!!」


「次は喧嘩じゃなくて咲希姐さんに夢中……というわけか!!霧島さん、イカスぜ!!」


すると霧島くんが割って入る!


「オイ!!お前ら、あんま余計なことばっか言ってんじゃねえぞ?!ったく。……咲希、もう行こうぜ。」



え……



い、いいのかな?



せっかくこんなに盛り上がってるのにいなくなっちゃって。


「どうぞ!俺たちのことは気にせずっ!!理人さんとの時間をお過ごし下さい!!」


「そ…そうですか……。では、お言葉に甘えて、」


「ハッ!!そのお声、めっちゃ澄んでてキレイな声っすね!理人さんのことも、その声でお名前を呼んで…」


「オイ!!さっきからうっせぇぞ、マサ!……じゃ、またな。行くぞ、咲希!」


グイッと手を掴まれ、
霧島くんにやや強引に連れ出された!



わゎ!



けっこう歩くの速っ!!



それに霧島くんの顔が微かに赤い!?



「霧島さんが咲希姐さんの手を握られたぞ!?」


「俺らの存在、無駄じゃなかったなっ!!」


「理人さんの咲希さんに対するあの想い、かなりマジだと俺は読んだな!」




オオォォ~。




そんな声が後方でかすかに聞こえてきたのだった……。
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