不良リーダーの懸命なる愛

冷笑

咲希と会った直後、理人は屋上に行こうと中庭をぬけて、
屋上へと続く階段の前へとやって来た。



すると、そこにはヤスと准平の姿があった。


二人とも、決して表情は豊かではない…。


理人はその二人の様子から、咲希との話を聴いていたことが伺えた。



二人の横を通り過ぎようとする理人に、准平が食ってかかった!!


「理人さん、なんで……………ッなんでピュア子ちゃんにあんなヒデェーこと言ったんダヨッ!!!!」


准平の声は怒りと悲痛の色を滲ませていた。



「……………。」


「答えてくれよ!!理人さん!!!なんで…」






バキィッ!!!






「…ヤ、ヤスさ………」


「てめぇは先走りすぎだ。理人。」



ヤスが理人に思いっきり顔面に一撃をくらわせる…。



「ーーッ!」


「まぁ、その痛みで少しは気が紛れんダロ?」


「…………………悪ぃな、ヤス。」


そう呟き、理人は力なく階段をのぼっていった………。



そんな姿をヤス達はジッと見ていた。


「あんなこと、理人も言いたくはなかったろうさ…。」


その言葉に准平は反論する。


「でも!ちょっと言いすぎだって!!言うにしても、もうちっとオブラートに…」


「二人きりだったらそうしてるさ。理人だって。」


「はあ!?ヤスさん、なに言ってるんダよ!!?理人さんとピュア子ちゃんの二人だったジャン!!邪魔なんか入んなかったぜ!?俺はしっかりと見て…」


「アホ。上の階にいただろうが。お邪魔虫が。」


「……………………へ?」


「フッ。上等だな。あんなデケェー虫、駆除しがいがある……!!」


「え……。あの、ヤ、ヤスさん?ちょっと恐ぇんですけど?!」


准平の怒りは頂点に達していたが、それを遥かに凌ぐ怒りを見た准平は、かえって冷静さを取り戻してしまう…。


「当たり前だろ。うちの “リーダー” を傷つけられておいて、黙って指くわえて見てるわけねぇダロ?准平。お前はそれでも平気なのか?」


その言葉に准平はハッとし、胸の奥でフツフツと何か熱いものが湧きあがってくるのを感じた!


「…………そんなの、平気なわけねぇーー!!!理人さんにも、ピュア子ちゃんにも、俺は恩があんだからな!!!二人のためなら俺はなんだってするし!!!」


ヤスはそんな闘志剥き出しの准平に優しい笑みを浮かべた。


「あ!!でもさ、ヤスさん!俺ら、いったいどうしたらいいんだ!?どうすれば里菜たちを…」



「策はある。」



ヤスがキッパリと言ってのけた。


「へ!?マジ!?どんなサク!?」


「んー、ハッキリ言うと理人が嫌いなやり方だな。」


「え…?!嫌いなやり方……??」


ヤスは不敵に笑うと、一転してすっと表情が変わる。



「目には目を。歯には歯を。……毒には毒を。かな?」


そしてニッコリと笑ってみせた。



そんなヤスを見て、准平は背筋が凍るような恐怖を一瞬感じてしまった!



「さて。忙しくなるな~、これから。」


「え!?じゃあまさか……!!」


歩き始めたヤスに、後からついてゆく准平…。



「期間は一週間前後かな?それでカタはつくだろうよ。奴らがトラップにハマりさえすればの話だけど。」


「え?!何ソレ!??どういうコト??」


准平はこれからの行動がよめず、ひたすらヤスについて行くしかなかった……。
< 87 / 151 >

この作品をシェア

pagetop