突発性ヴァンパイア・ガール!

嘘と裏切り

そんなこと、考えても分からなかった。

分かるわけなかった。


分かろうとして、分かった気がして、結局分からないままだ。


分からないんだ。


どうして侑也が好きなのか。


私は、本当に侑也が好きなのか。


ぐるぐる、ぐるぐる。


渦巻いている、心の中で。


混沌とした、この感情を


どうすればいいのか


分からないまま


ただ、やらなければならないことだけ山積みになっていく。



例えば、そう。


「ねぇ、うららって吉崎君と付き合ってるって本当?」


こういう噂の処理とか。



「そんなわけないじゃん!

私は侑也一筋だよ」


私は笑って見せた。


1週間が経つというのに、一向に噂が絶えない。


噂の困るところといえば、こちらが否定してもそれが信じてもらえず噂がなかなか収まらないというところだ。


けれど否定する以外に道もなく、私は地道に噂を否定し続けている。


しかし地道な活動にも少しずつ成果が表れ、何人か私の潔白を信じてくれる人も増えてきた。


「うららも大変だねえ、噂、なかなかなくならないよねえ」


梨花ちゃんがため息を吐いた。


「まぁ、ちょっとずつなくなっていけばいいよ」


確かにね、と梨花ちゃんは頷いた。


「でも、噂の否定をするのに若干ノロケが混ざってるのも少しうざったく思うよね」


「梨花ちゃんまで亜美みたいなこと言う!」


「ああ…亜美も言うんだね、やっぱり…」


梨花ちゃんは私の肩に手をぽんと置いて諭すように言った。


「あの優しくて冷静な亜美にうざがられたら終わりだと思った方がいいよ」


「お、脅すようなこと言わないでよ!」


というか私、何回かうざがられてるんですけど!?


恐怖で震えていると「うらら」と亜美の声が聞こえてギャーと叫び飛び上がった。


振り返るとそこにはやはり亜美がいた。


不思議そうな顔をしている。


「どうしたのよ、いきなり叫んで」


「いっ、いやっ、なんでもないよっ!?」


あははは、と笑って誤魔化すと、亜美は少し私を疑っているような目をした。


しかし問い詰める必要もないと思ったのか、「あっそう」とそれだけ言った。
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