現代のシンデレラになる方法


トイレに起きた隙に、先生の腕からやっと解放される。

もうあんな近くにいたら心臓もたないよっ。



今日は私は休みだけど、先生は夕方から当直だったはず。

私が早く帰らないと先生がゆっくり休めない……


先生から借りた寝間着を綺麗にたたみ、早々に私服に着替え帰る準備を始めた。


「何、もう帰んの?ちょっと待って俺も準備してくるから」

「えっ、え!何の準備ですか?」

「何って車で送る準備だよ」

「だ、だめです……っ!今日当直なんですからゆっくりしていて下さい。私は1人で帰れますので!」


いつもより強めに、そう断固として言い切った。

先生はその様子にちょっとびっくりしているようだった。

それからも先生から、せめて駅までだとか何度か粘られたが、私もここだけは譲れない。

だって当直って夜中下手したらずっと寝れないことだってある、すごくハードなもの。

そんな先生の貴重な当直前を私が邪魔する訳にはいかない。


一向に食下がらない私にようやく懲りた先生が、玄関先まで送ってくれる。


「でさ、大事なこと聞くの忘れてたけど、滞納してた電気代払えるのか?」

「はい、大丈夫です」

「本当に?」

「は、はい」

「あ、弁当なしっていう約束忘れるなよ。あと、ちゃんとご飯食べないとだめだからな。それから、またこういうことがあったら、すぐに相談すること。いいな?」


まるで保護者のように心配してくれる。

しかし元はといえば、私がふがいないせい。

だめだな、もっとしっかりしなきゃ。


「もし約束破ったら、強制的に同棲始めるからな?」

そう、にこっと脅されてしまい、私は背筋が凍る思い。

「わ、分かりましたっ」

慌ててそう返事する。


先生と同棲なんてしたら、毎日緊張しっぱなしになっちゃう。

きっと世の中のカップルは好きだからこそ、ずっと一緒にいたいだとか傍にいたいだとか思うんだろうけど……。

私はなんか違う。

胸がドキドキしっぱなしで、ふとした何気ない仕草でも先生にきゅんきゅんときめいてばかりで。

ちょっと離れた時ほっとしてしまうことさえある。


そんな人とずっと一緒なんて考えられないよ……っ。




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