現代のシンデレラになる方法
そのまま外科の医局へ行くと、高岡先輩がいた。
「お疲れ様です」
「おぉ、東條。今日午前中、外来だったんだけど、ナースから苺のタルトケーキもらってよ」
「へぇ」
「それがめちゃくちゃおいしくてよー」
「てか、その前に朝もなんか食ってましたよね?」
そういえば、朝から重いカツ丼食べてたような……。
「いいんだよ、午後はOPEがあるからな。そこで消費すんだよ」
目の前には、出前で頼んだらしき特盛の天丼。
だから贅肉がつくんですよ、とはいくら高岡先輩でも言えなかった。
まるで、医者の不摂生を体現しているようだ。
いつもなら高岡先輩と食堂へ行くところだが、今日は1人で向かう。
そこに現れたのは、またもやあの事務員。今度は両手にお弁当のようなものを持っていた。俺が1人でいるとこを狙ってきたのだろうか。
まさか、ずっと医局から出てくるの待ってたんじゃ……
「あ、あ、あの、すいません、これ、良かったら食べて下さい。お、お口に合わなかったら全然捨ててもらっていいのでっ。タッパーも包みも返してもらわなくていいので……っ」
一気にそう言うと、タッパーを押し付け、まるで言い捨てるかのように逃げていってしまった。
おかげで、ありがとうも言えなかった。
食堂で包みを取るとタッパーが出てきた。開けると、所狭しと数々のおかずが入っていた。
すっげ、もしかして全部手作り?
これだけ何種類も作るのにどれだけ時間がかかったんだろうか。
前髪ギザギザだし不器用かと思ってたけど、料理はできんだな。
早速頂こうとしたところ、甲高い声で話しかけられる。
「えー、東條先生、手作り弁当ですか?」
もちろん、外科のナース集団だ。
「え、まぁ」
「もしかして彼女とか?」
「いや、ちょっと今日は作ってくれた人がいて……」
「さっすがー。先生ともなると、ご飯作ってくれる女の子いっぱいいそうですもんね」
いつの間にかそんなナース達に囲まれてる。
あーあ、1人で食べたかったのに。
どうして女はこうも群れたがるんだ。
「しっかし、すごいお弁当ですね。どれも手の込んだものばかりじゃないですか」
「愛されてるんですねー」
「だから違うっての 」
ちょっかいを出してくるナース達を適当にあしらって、磯辺揚げから食べてみる。中には里芋が入っていた。
うまっ。
思わず口に出してしまいそうになる。
すげ、ちゃんとさくってする。
普通弁当の中の揚げ物ってべちゃっとして油っぽいのに。