現代のシンデレラになる方法



「どうぞ、召し上がれ」

満面の笑みで差し出す綾子さん。

どうして毎回そんなに自信に満ち溢れているんだろうか……。

おそるおそる一口、食べてみる。

その瞬間、口の中に広がる甘すぎるソースと何かの果肉。

もしかしてこれって……。


「昴、桃好きでしょ?パイナップルの変わりに入れてみたの」


あぁ、やっぱり、俺の大好きな桃がこんな姿になり果てて……。


「おいしい?」

「うん、おいしいよ」

と微笑むと、喜ぶ綾子さん。


「……って、な訳ねぇだろ。なんで酢豚に桃入れるんだよっ」

「嘘、おいしくないの!?」


おいしくないの……?

思わず青筋がピクピクしてくる。


もう言うより、身を持って分からせた方が早い。

一口綾子さんの口元へ差し出した。

ぱくっと口に入れると、予想通りの一言。


「まずっ、何これ!」

ははは、俺が聞きたいです。

毎回なんてもの作るんですか。


「今日は出前頼も」

そう言って酢豚もどきを片付けようとする綾子さんの手をとる。


「なんで?食べるって」

「いいよ無理しなくて」

「まずくても、綾子さんが作ったやつなら食べれる」

「え、どうしたの?変なもの食べて頭おかしくしちゃった?」

「は?」

「熱でもあるのかしら」

「ねぇよ」


額に手を添えられて、顔をそらす。

料理はまずいけど、だけど俺を想って作ってくれたんだと思ったら捨てられないだろ。

綾子さんが四苦八苦しながら、どうしたら俺が喜んでくれるか考えながら作ってくれてるのは知ってる。

なかなかその努力は実らないが。


「料理さ、そんなに頑張んなくていいよ」

「もしかして、私の料理食べるの辛くなってきた?」

「違くてさ、それ」


そう言って更に指先に増えた絆創膏を見る。


「あぁ、これ?もう本当不器用でさ。もっと若い頃からちゃんと料理しとくんだった」

「一応さ、嫁入り前なんだから」

「何?心配してくれてるの?でも、誰も貰い手なかったら昴がもらってくれるでしょ?」



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