現代のシンデレラになる方法

もう外から想像すればすぐ分かることなのに。

地上からあんなに離れたところにゴンドラが浮いてるんだから、高所恐怖症には禁物な乗り物じゃない……っ。

どんどん地上から離れていき、もう目線を外に向けられずかちこちに固まってしまう。

そんな私に先生は笑うと、いつものように優しく私の名前を呼んだ。


「ひなた、おいで」

言われるがまま、先生のすぐ隣に座るとそっと手を握られた。

大きな手で包まれ、その安心感に縋りたくて思わずぎゅっと握ってしまう。


そんな私の珍しい行動に少し驚いた先生は、頬をゆるませて私の頭を撫でてくれた。


「もう、可愛いなー」

「い、いや、可愛いなんて……っ」

せっかく先生に褒められているのに、この状況じゃ素直に喜ぶこともできない。


不意に目線を外へ向けてみる。

あぁ、あんなに建物が、人が小さい……。

まるでめまいがするようだった。

いっぱいいっぱいで、目を閉じで耐えていると。


「ひなた、ゆっくり目開けて」

先生にそう言われるも、怖くてなかなか目が開けられない。


「すいません、ちょっと……っ」

そう言うと、顎をつかまれ唇に暖かい感触が……。

こ、これは、まさか、せ、先生の唇では……っ。


もう頭はパニック状態、咄嗟に目を開けてしまった。

目の前にはすぐ先生の笑顔。

肩には先生の手が。


「やっと目開けた、そのまま外見れるか?」

「み、見れません……っ」

先生の顔から目線をそらせずそう答える。


「いや、これはこれで嬉しいんだけどさ。あまり目を合わせないひなたが、こんなに見つめてくれるなんて」

顔が沸騰するようだった。

だけど、今はそんな恥ずかしさより恐怖の方が勝る。

困ったような顔をすると、先生が私の両手をとってぎゅっと握った。


「大丈夫、ちゃんと手握ってるから。下は見ないで、目の前だけ見ればいいから」


そう言われて、先生の手をきゅっと更に締め付ける。

ちらっと先生に言われた通り、目の前に目線を向けてみた。




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