現代のシンデレラになる方法

しばらくして予定時刻に。

あの黒い車だろうか。
だって、際立って高級車だってのが分かる。

先生はすぐに私を見つけたみたいで、私の前まで車を寄せてくれた。


車窓を開けて、私に微笑む。

「おはよう」

「お、おはようございます……っ!」

がばっと、勢い良くお辞儀をする。

「どうぞ」

思わず、ドアに手をかけるのを躊躇ってしまう。
でも、先生に促され、意を決して先生の車に乗り込んだ。

「す、す、すいません、よろしくお願いします……っ」

車の種類とか外車とかよく分からないけど、先生の車がすごく良い車なんだろうなってことは分かる。
だってシートは革張りだし、乗っていても全然振動がないし。
走行音も静か。

あぁ、こんな貧相な私なんかが助手席に乗っていいものなのだろうか。


しかも、先生がすぐ隣にいるよーっ!

これじゃ、もう先生の方見れない。

ドキドキドキ。
激しく鼓動する心臓。
病院までどうかもって……っ。


紛らわせるように、話を切り出した。

「せ、せ、先生、あのお弁当作ってきて……っ」

「おぉ、ありがとう」

「いえ、めっそうもないです……!」

「あ、俺が迎えに来るようになったからって、毎日作ってきたりすんなよ?」


え、え、そのつもりだったんだけど……。

以前はちょっと抑えてたけど、これで毎日作れる口実ができたと思ったのに。


「あ、あの、やっぱり迷惑でしょうか……っ」

「いや、相澤だって仕事大変なのに負担になるだろう?」

な、何をおっしゃいますか!
先生にお弁当を作ることが今の私の生きがいになっているのにっ。


「あ、の、よかったら毎日作りたいです……っ」

あ、ちょっとこれは言い過ぎちゃった……?

どうしよう、勢いにまかせてつい言っちゃった。
これはさすがにちょっと勘付かれた……?


「お前、本当に料理好きなんだな」


……良かった、先生がちょっと鈍い人で。







< 19 / 196 >

この作品をシェア

pagetop