現代のシンデレラになる方法



あぁ、イライラする。

なんだか、いつもよりパソコンを打つ手にも力がこもる。

気付かないうちに、その怒りのこもった音がナースステーションに響いていた。

カチカチ、カチカチッ、ターン!

それを遠巻きに見て怖がる後輩。

私に声をかけられず、そわそわしているのが目に入って、慌てて笑顔で話しかけた。


「ごめん、どうしたの?」

「あ、すいません、あの503号室の飯館さんなんですが……っ」

ビクビクしながら報告する後輩。

私、そんなに態度に出てたかな。





「ちょっといい?」

不意に恰幅のいい師長がナースステーションにいる皆に声をかけた。

その隣にいるのは、さっきの悪魔。東條弟だ。

私は横目でちらっと奴を睨みつける。

「今日から、うちの外科に研修医としてきた東條昴先生です。ちなみに名前でもう気付いた人もいるけど、東條先生の弟さんです。うちの病院は初めてですから、パソコンの使い方など教えてあげてくださいね」

「東條昴です。これから皆さんに色々ご迷惑をかけると思いますが、一生懸命学んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」

そう言って、ちょっとはにかみながら笑うその様は天使。

に、見えるが、私には計算づくした笑顔にしか見えない。

こう笑っておけばいんだろ的な、こいつの悪意がひしひしと伝わってくるようだ。


しかし、裏の顔を知らない他のスタッフは、まんまと奴の笑顔に騙されている。

「きゃー、可愛いーっ」

そんな小さな声があちこちで聞こえてくる。


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