現代のシンデレラになる方法


それから、飲み会で外科のナース達から色々聞いた。

2人の関係やら、あの相澤っていう子のことも。

どうやら付き合っているっていう訳ではないらしい。

ただ、これから付き合うんじゃないかと噂はされていた、と。


だけど、ここ最近、2人で見かけることはなくなり。

女の方も得意の弁当作りを辞めたとのこと。



面白いのはここからだ。

外科のナース達は、相澤っていう子が気に入らずいじめていたらしい。

酒が進んで饒舌になった彼女達が、楽しそうに喋ってくれた。

しかし、距離を置いてからいじめも自然となくなったと。


本当、単純な女達だ。

やってることが幼稚過ぎる。





「兄さん、外科のナースさん達から聞いたよ。気になる子がいるんだろ?」

「は?気になる子?」

「誤魔化さないでよ、相澤さんだろ。この前見かけたけど、可愛い子だね」

もちろん口だけだ。

可愛いなんて微塵たりとも思えない。

自分で言っていて思わず笑いそうになってしまう。


「でも、またいじめられたら可哀想だよ。付き合うとなったら、今度はもっとひどくなるかもよ?」

「なんのことだ」

顔色を変えて聞く、兄貴に心の中でほくそ笑んでしまう。

「え?知らなかったの?」


可哀想な兄貴。

自分のせいであの子が傷つけられていたなんて全く気付かなかったのだろう。

そういうにぶさが、周りの人間を傷つけるんだよ。

いい加減、そろそろ気付けよ。


「でも、今は距離を置いてるんだって?喧嘩でもしたの?」

「いや」

「でもそれならもう関わらない方がいいよ。先生と彼女が距離を置くようになってから、ナースさん達ももういじめるの止めたんだって」

「正直、あの子は兄さんに釣り合わないよ。周りだってそう思うからいじめるんだし」


眉を寄せ渋い顔をする兄貴。

そうだ、もっと悩めばいい。

もっと苦しめばいい。

そして、追い打ちをかけるように言った。


「ねぇ、もう彼女が可哀想だよ」


ははは、さぞかし辛いだろうに。



しかし、この兄貴をここまで困らせる相澤とは何者なんだ。

あの野暮ったそうな子にどこにそんな魅力があるというんだ。



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