現代のシンデレラになる方法
「……もう気分悪い帰る」
そう言うと、立ち上がった。
誰も彼女を引き止めようとはしない。
すると今まで黙っていた昴をを縋るような目で見始めた。
「昴、一緒に来てくれない?なんか本当に具合悪くなってきた」
すかさず、私が口を挟む。
「大丈夫ですか?」
まだまだ、帰しませんよ。
特大なネタがあるんだもの。
これは昴を長年苦しめてきた罰なんだから。
少しでもお返ししてやんないと気が済まない。
昴が今までどれだけ傷ついて、どれだけあなたに囚われてきたと思ってるんだ。
「あんたに言ってないんだけど」」
「すいません。でもお体の具合よりも、私が見たところちょっとお顔に不具合がありそうで……」
「はぁ?」
「なんだか鼻筋が曲がってるようで、瞼も二重の皺がなんだか不自然ですね。目頭もちょっと切りすぎじゃないですか?私、美容整形外科で働いてたことあるんです、よかったら修正の上手いとこ紹介しましょうか?」
訝しげに彼女の顔を凝視すると、慌てて目線をそらす理紗子。
「へ、変な言いがかりやめてくれる?」
しらばっくれる彼女に、私は彼女の顔面すれすれで鼻を叩こうとした。
「きゃあっ、ちょっと何すんのよ?」
「すいませんお綺麗な顔に、虫がいたものですから払おうとしたんです」
「ぼ、暴力未遂で訴えるわよ」
未だ鼻をしっかりガードしたままの彼女。
してやったりと笑みを浮かべる。
「鼻だけそんなに大事ですか?あまり衝撃加えるとプロテーゼずれちゃうかもしれませんもんね?」
私がそう言うと、理紗子がはっとして鼻から手を離した。
もう何も言い返せず顔を真っ赤にして憤慨している。
連れの男2人はあんぐり口を開けたまま。
もうこれ位で十分だろうか。
私は今までずっと黙って聞いていた昴の手を取った。
「昴先生、帰りましょう」
「昴……」
またもや昴に縋るような目を向ける理紗子。
それに対しやっと昴が口を開いた。
「……みじめだな」
そう言って、忌み嫌うように彼女を見下す。
「昴……?」
「さよなら、理紗子さん」
今日初めての笑顔を彼女に向け、私と一緒に店を出た。