現代のシンデレラになる方法



「昴から以前聞いていたんですが、理紗子さんて二菱商社にお勤めなんですってね。商社なんて忙しそうですけど、外でスーツを着て働く女性ってなんだか憧れます」

「いえいえ。でも、看護師さんの方が大変でしょう?汚い仕事も多いでしょうし、私には到底できないわ」

「えぇ、でもお年寄りの笑顔には癒されますし、元気になっていく姿を間近で感じられるのはとてもやりがいを感じます」


男性2人が頷きながら感心したように私の話を聞く。

別にこれは狙って言った訳ではない、全て事実だ。


「理紗子さんは仕事にやりがいを感じる時ありますか?やっぱり、お給料をたくさんもらっていそうですし、ブランド物を好きなだけ買っている時とかでしょうか?」

「別にブランドが好きな訳じゃないわ、質が良いから買うだけで」

はぁー、そのでかいじゃネルのロゴをぶら下げたピアスとネックレスをしながらよく言うわ。

自己顕示欲丸出しじゃない。


「確かに、理紗子さんはブランドよりも男性の方がお好きそうですね」

「はぁ?」

「あ、すいません、冗談で言ったつもりだったんですけど」


私達の間でバチバチと火花が散る。

ようやく気付いた男達も口出しできずに、ただ、はらはらとした様子で傍聴していた。


「そのバッグ確か数年前のモデルよね?私も持ってたわ、今はもう使ってないけど」

プラタのバッグを見て見下すかのように言う。

「えぇ、初めてのお給料で買ったバッグなんです。思い入れがあって今でも大事に使っていて」

「えー、私あんまり古いモデルとか使いたくなーい。だってちょっと遅れて見えない?」


理紗子が男達を味方につけようとそう尋ねるも、残念ながら2人とも渋い顔。


「そうかな、そんなことないと思うけどなー。なぁ?」

「あぁ、そのバッグシンプルなデザインだから流行り廃りなさそうだし。それよりも、物を大事に使ってる方がいいよ」


それを聞いた理紗子は悔しそうに押し黙ってしまった。


しかし、この女、悪い女の性格丸出し過ぎて話にならない。

昴は本当にこんな女好きだったのか。

しかも結婚を考えていた位本気で。


だけどそれ程までに追い詰められ、この人しか縋る人がいなかったらしょうがないのかも。

きっと、こいつは言葉巧みに高校生の昴を騙したのだろうから。





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