現代のシンデレラになる方法



今日は外科の当直だった。

急患少ないといいが。
なんて思いながら、外来へ向かう。

そんな中、看護師の焦った声が耳に入った。
駆けつけるとそこには、あの事務員と1人の看護師。

「東條先生!」

「どうした?」

見ると事務員は荒い呼吸を繰り返し、意識も朦朧としている。

「ちょっとストレッチャーまだ!?」

看護師が焦って声を荒げる。

「いい、抱えていった方が早い」

俺は、彼女を抱きかかえ処置室へ向かった。
体格的に華奢なものだから軽いだろうとは思ったが、思っていた以上に軽くてびっくりする。

これいびられ過ぎて、ろくに飯も食ってねぇんじゃねぇの。

「喘息持ってるのか?」

その問いに言葉は発せず、こくん、と頷く彼女。

処置室の背もたれがある椅子に座らせ、看護師に指示を出していく。

「おそらく喘息発作だろうから、メプチンエアーかがせて酸素2Lマスクで、ルート取ってネオフィリン1Aを生食100で落として」

「はいっ」

2人の看護師が手際よく処置に入る。

「Satどう?」

「98あります」

そこに血圧を測っていた若い看護師が慌てて言う。

「あ、あの、先生、血圧が80台です」

「元々低めなんだろうけど、あんま食べてなさそうだし脱水もありそうだな。補液追加しとくから、早めに落として」

「はいっ」

吸入薬をかがせて、ネオフィリンを落とし始めたところで、ようやく発作が治まってきた。

規則正しい呼吸を繰り返している。
それはやがて寝息となった。

だいぶ疲労が溜まっていたのか、そのまま寝てしまったのだ。

良かった、重積発作とかじゃなくて。

無防備な寝顔に安心して処置室を出た。








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