現代のシンデレラになる方法


「え、えっとあの……っ」

私の声は聞こえないのかな……っ。

2人の勢いは止まらず、どんどん手に取っては私の体に合わせるの繰り返し。


「次はボトムね、パンツとスカート一着ずつ買っとこうか」

そ、そんなにいらないです、と言おうとした瞬間。

早速私の体に、スカートを合わせてくる。


「ほらさっきのトップスと合わせたら可愛いー。さっきのノースリーブをスカートの中に入れてさ、街中にこういうの着た若い女の子いっぱいいるじゃない」

「なんか発言がおばさんっぽいんだけど」

「おばさんじゃなくて、お姉さんと言って。さぁ、次はバッグと靴と……」


思わず青ざめてしまう、一体どれだけ買うつもりなんだろうか……。

それからも私に有無を言わせず、次から次へとカゴの中へ入れていく。


「やっぱり一番似合うのはワンピースよね、これなんかどう?」


そう言って西原さんが手にしたのカジュアルで可愛い白のワンピースとシックな紺色のワンピース。

「ねぇ、どっちがいいかな?」

「もうどっちも買えば?」

「よっ、太っ腹ー」


このお店に入ってから値札を見たのは最初だけ。

さっきから値段なんて見ずに、ぽいぽいカゴの中へ。

こんなに一度に買い物したのは初めてだ。


あぁ、これで合計いくら位になるんだろう……?

カゴの中の値札を見ながら頭の中で暗算していった。

そして、おおよそで割り出した合計に、頭がくらっとする。


それを、ぽいと知り合ってまもない私なんかに払えちゃうって。

一体お医者さんていくら、もらってるんだろう……?


「お出かけ用、出勤用、ちょっと気合い入れた時用。あとはー……」

選んでもらった、3組のトータルコーディネート。

それでもまだ足りないと、店内を見渡し始めた西原さんの腕を慌てて掴んだ。


「も、も、もう十分です……っ!」



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