赤い電車のあなたへ



わたしたちが乗る赤い電車は、午前中に最終まで行く数少ない便。これを逃せばあとは11時過ぎまでない。後は折り返し運転とかで、三日湖まで直通では行けないから。


夏樹には申し訳なかったけど、ほたるや龍治さんの都合を考えたら、みんなの楽しみや龍太さん探しを優先したかった。


もしかしたら機嫌が悪い夏樹に逢いたくなかっただけかもしれないけど。もしもそうだったら、それは完全な逃げだ。


きちんと向き合うって決めた筈なのに。わたしは何をやっているんだろう?


わたしは出入り口付近に佇んだまま、ほたるに促されるまで席に座れなかった。


「夏樹なら必ず来るよ! 鞠が心配だって言ってたからさ。龍治さんをすごく睨みつけると思う」


からからと明るく笑うほたるの話に、龍治さんが乗っかった。


「夏樹くんって、確か鞠ちゃんの従兄だったよな? すごく心配性だって」


「そうなんですよ! あたしの前でも鞠が鞠がって……恋人でも流石にヤキモチ妬いちゃいますから!」


そんなふうに明るく話したほたるだけど。なんだかわたしはちょっと引っかかり、違和感を感じた。



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