赤い電車のあなたへ



「とりあえず鞠ちゃんは先に行ってなさい。夏樹を見たらちゃんと伝えておくから」


そう言ってくれた健太叔父さんに伝言を頼み、 わたしは急いで駅に戻る。


息を切らし駆け込んだわたしに、ほたるが荷物を渡しながら心配げに訊いてきた。


「鞠、夏樹は?家にもいなかったの!?」


夏樹はいったいどういうつもりで恋人を心配させるんだろ?こんなの夏樹らしくないよ!
なんとなく頭にきたわたしだけど、なるべく刺々しくならないよう努めながら言った。


「あ、うん。いなかった。だけど、たぶんどっかで道草食ってるだけだと思うよ。心配しなくていいって!ね?夏樹ならゾウに踏まれても平気だから」


わたしは根拠がない自信で親友に明るく言い、ポンポンと肩を叩いた。


「それはいいけど、急がないと電車がでちゃうよ」


そんなふうに龍治さんが教えてくれ、わたしは待っていてくれたほたる達と一緒に、発車寸前の電車に駆け込んだ。


時計を見たら8時17分55秒! 本当に危なかった。電車が動き始めてホッと息を着く。


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