赤い電車のあなたへ
「………」
夏樹はだんまりになっても、わたしの手を離そうとしない。
「ね、何を怒ってるの? 龍治さんならついさっき会ったけど、見つかった龍太さんと一緒に2人でお話をしてるよ」
夏樹が龍治さんの事で怒ってる、というふうに解釈してわたしは説明した。
「なら……」
夏樹はなおもぐいっとわたしの腕を引く。
「おまえがそれ以上関わる必要は無くなった。だからもう帰るぞ」
そう言って再びわたしを引きずるように歩かせようとするから、わたしは当然足を踏ん張って抗議した。
「待ってよ! どうしてそうなるの? わたしはほたると旅行にきたんだし、龍太さんとももっとお話したいんだから!……痛っ!」
体重をかけたせいで、わたしの足首が悲鳴をあげた。
それでも夏樹はチラッとそちらを見ただけで眉間を寄せる。
「高校生だけで旅行なんて早すぎる! 高校を出てからにしろ!!」
「……夏樹!」
従兄の怒りっぷりと無理解な言動に、わたしはどう対処すればいいか解らずにいた。
だけど、意外な助けが現れた。
「ちょっと待ちなさい」
後ろから響いたのが、わたしが泣きたくなるほど聞きたかった声で。声を掛けられたからか、夏樹もようやく足を止めてくれた。
「誰かは分からないが、鞠ちゃんに乱暴をしないでくれないか?彼女は足を挫いてるんだ」
怪我のことを思い出して来てくれたんだ。振り返ったわたしは、龍太さんの姿を見てホッとした。