赤い電車のあなたへ



わたしは彼に負担が掛からないか心配したんだけど、龍太さんは平気だよと笑う。


「馬鹿力と体力だけが取り柄だからね。遠慮なく頼ってくれていいよ。人の役に立てるってことは嬉しいものだから」


「はい……ありがとうございます」


ここで“それじゃあ遠慮なく頼みますよ”と軽い冗談を言おうとした。すこし打ち解けたくて。


でも、やっぱり図々しくないかな? と思い萎縮してしまう。


仲良くなりたいしもっとくだけた話をしたい。でも切り替えるタイミングがわからない。

あまり親しくないのに馴れ馴れしいのも嫌われるかな……と。考えてしまう。


これがすれ違うだけの人なら逆に気兼ねなく出来るけど、わたしの初めて好きになった人だし。おいそれと思い切った事はできない。


わたしはそんなふうにもやもやした気持ちを抱え、龍太さんと一緒に旅館を出た。


幸いにほたる達には見つからず、龍太さんが導くままに進む。


彼がわたしを気遣いながら進むのは、湖に行くルートからすこし外れてる。ちょっと深い森に入ってゆっくりと進んでく。

岩場を通り過ぎて灌木を抜け見えた先は。



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