赤い電車のあなたへ
「鞠ちゃん、少しでも寝たら? 体に毒よ」
多香子さんがわたしに気を遣って声をかけてくれる。でも、わたしはそんな風に心配されるべき人間ではないんだ。
「いいんです。わたし……ずっと看てますから。多香子さんこそ寝てください」
「でも、鞠ちゃん夕食も手を着けて無かったじゃない? そんなふうに根詰めても体に毒なだけよ。睡眠と食事は健康の基本なんだから」
わたしは答えないままに龍太さんに目を向けて押し黙った。
口を開けばきっと“放っておいてください!”と叫んでしまいそうになるから。
自暴自棄と投げやりな気持ち。自分を責め苛んで、繰り返し繰り返し涙を流した。
わたしなんてどうなってもいいし、龍太さんを思うならば遠ざかるべきだ。
でも、せめて龍太さんが無事に目覚めるところを見たい。
ふたつの気持ちがせめぎ合い、わたし自身どうしていいのか解らなくなる。
龍太さん……。
龍太さん!!
わたしは決して呼べない名前を、口の中でだけ呼ぶのを自分に許した。