空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~

「ねえ、せっかくだからボク、ちょっと散歩したいな」


青い顔をした大樹がそんな恐ろしいことを言い出して、こっちの顔まで青くなる。


当然あたしはブンブン首を横に振って、全力で阻止しようとした。


「なに言ってんの!? ダメダメ絶対にダメー!」


「そんなこと言わないでよ。せっかくこんなにキレイな紅葉なのにさ」


「ダメです! ぜーったいにダメ!」


「ちょっとだけ。ほんのちょっと歩くだけだから」


うるうると、震える子犬のような目で訴えられてしまった。


う・・・・・・こ、この目にはあたし、実はかなり弱い。


それに大樹の気持ちもよく分かる。


奇跡的に参加できたバス遠足なのに、歩くことすら許されないんじゃ、あんまりだ。


本当なら、このまま休ませたいんだけど。


ううぅーー・・・し、しかたない!


「ち・・・ちょっとだけだからね?」

「うん! ありがとう佳那!」


大樹の白い顔がパァッと明るく輝いた。


・・・・・・この笑顔にも、弱いの。あたし。


ハァ、あたしも甘いなぁ。

< 24 / 244 >

この作品をシェア

pagetop