人魚と恋

自転車


今日は買いたい本があって、近所の本屋に行った。
でも見つからなかったから少し先の本屋までチャリで行くことにした。今日は久しぶりに予定がない。

あの合コン以降、放課後は司路の恋愛話、時々おれの話、と、とにかくひたすら司路と一緒だった。買い物があっても2人で行ったし、家に帰るっつっても司路がついてきた。話してて面白いやつだからたいして苦にはならなかったが、自分でも一緒にいすぎだなと流石に思った。
今日、司路は晶と遊ぶ約束をしたと言っていた。お前も来いよ、と誘われたが、欲しいもんあるし、たまには別も良いだろ、と言うと少し考えて、そうだな、最近一緒すぎたわと笑って、じゃあ今日は晶のもとに浮気してくるーとはしゃいで、学校が終わるとすぐに晶の学校に向かった。

俺はというと、ゆっくり家に帰って、着替えて、出掛けた次第だ。


2軒目の本屋にはお目当ての本が置いてあった。あとはさっさと帰ってこれを読もう、そう思い、店を出て自転車に跨ったその時。
携帯が鳴った。親はあんまり電話はしない。だいたいおれの携帯にかけてくる相手は1人だ。

液晶画面を見る。予想通りだった。

「もしも」

し、まで言い終わる前に司路が話し始めた。

「大変なことが起きた。緊急会議するから晶ん家集合な。早く来いよ、待ってるから。それじゃ」

用件だけ言うと司路はさっさと電話を切った。こんなことは初めてだ。
大変なこと、というのに興味もあるし、こんな様子の司路の理由が知りたくて、おれは、今日も結局あいつと一緒か、と思いながら自転車を漕ぎ始めた。

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