金木犀のアリア

3話/風が吹いている

 『「幸せ」と云う字は不思議な字だ』誰かが言った。


理由はこうだ。

「辛いと云う字に1本多い。
それだけで全く違った意味になる。



1本のプラスαは、果たして何なのか?



詩月は、ふと考えてみる。



 窓辺から見上げる空は、吸い込まれるほど青いのに 温度調整された部屋に閉じ籠った飼い猫のようだ。


練習室でヴァイオリンを弾いてみる。

ただ演奏する。



詩月には、他に何も策がない。




 60半ばにして逝ってしまったリリィ。



『「生きている」ことが辛いなら死んでしまえばいい』と歌って、バッシングされた若い歌手がいたのを思い出す。



死にも色々な理由があるんだろうけれど。


詩月は、人様があれこれ口出しなどできないだろう?と思うこともある。


< 202 / 233 >

この作品をシェア

pagetop