金木犀のアリア
 結局、僕がソロでヴァイオリンを弾くことになった。



コンクール本選決勝での「懐かしい土地の思い出」の演奏を聴き、学長は余程この曲が気に入ったらしい。



 指の不調で練習量が足らないなど、言い訳は言えない。



お気に入りの曲を弾けることは、僕にとって実にラッキーな話だった。





 楽譜を綿密にチェックし入念に、音を確かめる。



音の強弱、音のバランス、テンポの乱れ、ミスの回数など。



弾き慣れた曲だが見直すと、自分がいかに我流で演奏していたかがわかって驚いた。



 ストレス全開。


ミスの多さに思わず、「お前、それでまともに弾いてるつもりか!」と毎回、自分を怒鳴りたくなる。



おまけに診察を受けにいくたび、主治医からは苦い言葉を浴びせられた。



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