金木犀のアリア
「荒城の月」の短調の旋律とツィゴイネルワイゼンと、「夢のあとに」そして「宵待草」が詩月の頭の中で闘っている。



「貴方が言うと、ほんとに演奏しそうで恐い」



そう言って微かに笑った緒方の顔は、「弾いてはいけない」と言う意味だったのか?


禁じられて、なお弾きたいと思うのは天の邪鬼だなと詩月は思う。



 難しい技巧を昼と言わず、夜と言わず弾き続け、試験当日に、不本意な自分らしくない演奏をしてしまう学生もいる。



何のために頑張って来たんだ?

勿体ない、残念すぎるだろう?


たいして上手くもなく、ただ感情に任せて弾いている学生もいる。


でも、それで思い通りに弾けたなら楽しく弾けたと言えるのかもしれない。



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