金木犀のアリア
ヴァイオリンは、リリィに5才から高校受験まで指導を受け、現在はリリィの教え子の元ヴァイオリニストに教わっている。

 65歳。短い生涯だ。

リリィにはもっと、ヴァイオリンの指導をしていてほしかったし、彼女の演奏をもっと聴きたかった。

そして、もっと彼女に演奏を聴いていて欲しかった。

生前のリリィの姿を思い出し、詩月の胸に孤独感が押し寄せる。

リリィは拙い演奏も落ち込んで上手く弾けていない演奏も、どんな時も優しく微笑み、誉めることはしても、決して咎めたり叱ったりしたことはなかった。

それに詩月は、リリィにヴァイオリンの指導を受けてはいたが、ピアニスト志望で、1度もヴァイオリンのコンクールに出場したことはない。

リリィは「ピアノもヴァイオリンも音楽を愛する思いは同じだから」と、詩月の出場するピアノコンクールには、詩月の演奏をいつも最前列で見守っていた。


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