幸せの瞬間たち
夏の浴衣姿が眩しすぎて、僕は鼻緒のそばにある綺麗に塗られた君の桃色の爪に何度も視線を移した。
「似合う?」
不安そうに訊ねた君だけれど、ずっと見続けていたらクラクラして、ちゃんと歩けなくなるんじゃないかって、そう思うくらいに君は素敵だったんだ。
夜空に咲く、君の爪と同じ色の大きな花。
お腹に響く大きな音と、周囲の歓声。
蒸し暑い夏の夜を彩る花たちと、君の後れ毛。
切り取った一瞬は、その花を見上げる君の横顔。
「綺麗だね」
「うん」
瞬く光を宿した君の瞳に映るその花を、僕は見ていたんだよ。