薬品と恋心

ジークが好奇心に満ちた瞳を輝かせて門の外の話をするのを聞きながら、ティアはそれに口をつける。


客として訪れているティアが屋敷を抜け出すのは難しいので、ごくたまにしかジークと外へ出ることはできなかったが、その話を聞くだけでも心が踊る。


ジークは初めてティアを連れ出したときも、その前も度々屋敷を抜け出して外へ行っていたらしい。


ティアの移動手段は馬車で、屋敷と屋敷を行き来することはあっても、屋敷の門の外に遊びに出たことはない。


そのため、あの日ジークと見たものはティアの目にすべて新鮮に映った。


色とりどりの小さな草花が咲き乱れている野原、はだしで歩くと気持ちのよい芝生。湖の水の冷たさは夏の暑さを忘れさせてくれた。


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