薬品と恋心
ティアは胸元に置いた手をグッと握りしめた。
これからゲオルグが来ることになっている。
ティアは顔を上げて時計を見た。
ー時間だ。
確認すると同時にドアがノックされ、ティアの全身に緊張感が走る。
ティアは呼吸を一度整え、自分を落ち着ちつかせてからゆっくりと声を発した。
「どうぞ」
その声に答えるようにカチャリと音をたててドアは開いた。
そのドアの先にはゲオルグが立っている。
「ジェンティアナ、調子はどうだ?」
その言葉と、ドアの先に立つ姿は叔父を思い起こさせる。
ーあの時と、同じ…。
ティアが商品になることがわかったときの叔父とゲオルグが重なって見えて、頭が一瞬ぐらりと重くなった。
ーいや、違う。
ーあの時とは違う!
ー過去にとらわれるな!!
頭の中で別の自分が叫ぶ声が聞こえてティアはハッとした。