薬品と恋心

母が手放すことなどありはしない。


手放してしまう状況はひとつだ。



ーつまり、母はもういないのだ。



改めて現実を突きつけられ、ティアの唇が震えた。



「誰のものかわかるか?」


ゲオルグは再度ティアに現実を突きつける。



「………っ」



目頭が熱くなり、涙がじわりと込み上げそうになるのを唇を噛みしめて抑え込み、ティアはゲオルグを睨み付けた。



「…いい顔だな。今にも泣きそうなのに気丈に振る舞おうとするその表情…なかなかそそるものがあるぞ」



ゲオルグはわずかに口角を上げて笑う。



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