薬品と恋心
調合師というのは薬を調合する人のことだ。
原料となる薬草を買うため薬草販売の店に来ることは珍しくはない。
しかし、目の前にいる人は、こんな裏通りの治安もいいとは言い難い店にいるには似つかわしくない人のように感じた。
なんというか、雰囲気が上品なのだ。
薄汚れたポンチョをまとった、みるからに下町の子供といった格好の自分のほうがきっと違和感なく店に溶け込めているにちがいない。
なにはともあれ、お客さんがいるのなら出直すしかない。
ー私が採取人であることは知られてはいけないのだから。
また来ます、とだけ告げてこの日は店を後にした。