躊躇いのキス
「どれ?お前のお勧めのやつ」
雅兄は、ジュエリーが並ぶショーケースの前に行くと、ざっとそれに目をやる。
店長たちも、相手があたしだということもあるけど、
隣に並ぶ雅兄の姿を見て、決してなれなれしくはしなくて……。
もうここは仕方がない。
あくまでもあたしは店員。
無駄な感情は捨てて、雅兄を接客しよう。
そう捉えることにした。
「お探しのものは、どのような形ですか」
「何その口調」
「え、いや……一応、ここあたしの働く店だし」
「でももう業務時間外だろ。
客として、アドバイス程度に教えてくれればいいから」
「あ、はい……」
せっかく、一線を引いて接しようと思っているのに、それも許されなくて……。
敬語をため口に直して、再度雅兄へ質問を投げかけた。