躊躇いのキス
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
朝ごはんを食べ終え、
化粧と髪の毛を完璧に整えて家を出た。
相変わらず早くなった朝。
いつもなら、今頃起きてたのに……。
そんなことを思いながら、隣の家の前を通り過ぎようとしたら……
「……あ…」
ちょうど雅兄が家から出てきた。
「おはよぉ……。
お前も朝、これくらいなわけ?」
「え、あ……うん」
大あくびをかきながらのそのそと歩いてきた雅兄の姿を見て、つい調子がくるってしまった。
紺のスーツをスマートに着こなし
軽くワックスで整えられた髪。
高価なものだとみられる腕時計がアクセントにきかしていて……
「……」
正直、言葉を失っていた。