躊躇いのキス
 
当たり前に過ごしていた日常は
自分で何もかもするようになってから、初めてありがたみに気づくものである。

今さらながら、お母さんに感謝の気持ちでいっぱいになった。


「荷物。今日だっけ?
 宅配で届くの」

「……ん」

「アンタの部屋に、適当に押し込んでおくわよ」

「うん」


今日は、一緒に暮らしていた時の荷物を、雄介が宅配で手配して送ってくれるみたいで……。


本当に本当に、全部終わっちゃったんだなぁ……


なんて、
他人事のように思っていた。
 
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