躊躇いのキス
 
訪れる沈黙。

こんなの、告白しているようなものだ。


だけど雅兄は鈍感だから……
こんな言い回しじゃ気づかないかもしれない。


ドキドキしながら、次の行動を待っていると
雅兄の座る椅子が、くるっと回転する。



「侑那」

「……」



下から見上げられ、真剣な瞳をした雅兄と視線が絡み合う。


伸ばされる手。

ビクッとして、思わず目を閉じた。




むぎゅ。




「そういうセリフは、
 女子力を上げたときに言え」




雅兄の伸ばされた手は、
あたしの鼻をぎゅっとつまんだだけだった。
 
< 63 / 203 >

この作品をシェア

pagetop