独り言<あるOLの一日>
『でも、案外パジャマの購入価格って生活の質やレベルを計るいい目安になるかも‥』

真奈美は、ちょっと似非TVコメンテーターにでもなった気分で自分のそのくだらない
疑問につかの間陶酔したりして‥

『果たして、彼女(真奈美自身)のようなごくごく普通の庶民は、一体パジャマに
 どれくらい遣うのでしょうか?』

『まあ、生活必需品というわけではありませんので、一回の飲み代分くらい‥三千円~五千円というところじゃないですかね‥。』

パジャマ姿でのろのろとベッドを整えながら、コメンテーターになりきってそんなつまらないシナリオに想像力を働かせていた真奈美は思わず苦笑いをした。

すると、「ただいま7時05分です!」

テレビから聞こえる妙に甲高い女子アナの声にはっとさせられた。

「わっ!やばいっ!朝から、またつまらないこと考えちゃった。時間ないのに!」

そして、おもむろに浴室内にある洗面台へ向かった。
顔を洗い、歯を磨く。

そう、この歯ブラシだってディスカウントショップで買った2本100円、練り歯磨きは98円の大特価品!

洗顔ソープも激安品である。
別に、自分にお金をかけたくないのではない。

特別な贅沢をしているわけでもないのに大した貯金もない独身女としては、これくらいの倹約生活はせめて心がけなきゃいけない‥と、自分を律しているのである。

それまで大して気にも止めていなかったが、誕生日に愕然とした
『今から23年後に60歳』
‥というあまりに現実的な数字が頭をよぎってからというもの、もはや他人事には思えなくなってしまったのである。
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