AfterStory~彼女と彼の話~

├愛のシルシ(星野美空×水瀬幸雄)

【星野美空×水瀬幸雄の場合】

 side水瀬幸雄



 愛のシルシを―…



 今年もバレンタインの季節が迫っていて、昨年は趣向をこらしてチョコ風呂が楽しめるホテルで過ごしたけれど、また同じなのは駄目だよな。

 男の自分がこんなにも悩むなんて、世の中の女性がバレンタインに悩む理由がわかったような気がする。


「…―っていうことを上層部は考えているけど、水瀬たちはどうだ?」
「広げたい気持ちは分からないでもないですが、他社と同じようにアメニティをつけるのは読者の購買意欲がそちらに向く危険性があり、編集部のメンバーの中には反対をしているのが多いです」
「まぁ、うちら(四つ葉出版社)は内容勝負で行っているのに、アメニティで気を引くのも抵抗があるよな。ただ現実的に売上についても目を向けて欲しいし、書き続けるためには色んな販売方法を考えないといけないぞ」
「はい…」
「じゃあ、会議は終わりだな。お疲れ」

 この日の午前中は高坂専務と会議室で今後の展開について話し合いをしたけど、高坂専務と俺たちファッション部との考え方の違いが現れて、結局纏まらないままに話し合いを終えた。

 後で副編に会議の内容を報告して、もっと意見交換をしないとな。

 これから『Clover』をもっと広めるために、上層部や高坂専務の言っていることも、編集部のメンバーたちの雑誌を作ることの熱意だって解るし、俺が上手くお互いを取り持っていかなくちゃな。

「夜はいつもの所で待ってるからな」
「締め切りが迫っているけど、合流が出来るようにするよ」

 仕事中は上司と部下ということで敬語だけど、"いつもの所"というワードで敬語から友人としての口調に変わる。

 誘いに出来るだけ応えられるように、仕事をすすめないとな。
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