AfterStory~彼女と彼の話~
「すっごく癒やされる」
「俺はこっちだな」
「んっ…」

 何が?と思って顔を見上げた瞬間に、彰にキスをされた。

 行き成りだったから瞬きをしたけれど、瞼を閉じればキスの深さが増して、差し込まれた熱に絡んで応える。

 徐々に意識が遠のきそうになるから、彰の腕をぎゅっと掴んで意識を保とうとするけど、彰のキスの勢いは止まりそうにもない。

 でもキスを止めないで欲しいと思う自分もいて、彰からのキスに応え続けた。

 寝室の中は私たちのキスの音だけがして、ときおりベットのシーツが擦れる音が入り混じる。

 彰の唇がそっと離れると、私の頬と目尻やオデコにキスをして一息ついた。

 私も乱れる呼吸を整えるために息を整えて彰を見上げると、彰はまた優しい顔しながら抱きしめる腕の力を強め、私も彰の胸にまた顔を埋める。

「こうしている方が癒やされる」
「私も癒やされるよ」

 彰とデートしたりするのも癒やされるけれど、こういうのも癒やしの一つだよね。

「そうだ。バレンタインのチョコもあるけれど、それも後ででいい?」
「ああ」

 まだこうしていたいから、ご飯もチョコも明日にしちゃえ。

「好きだ」
「私も好-…」

 "き"の言葉は、彰のキスで塞がれた。
 



 "The kiss of healing to you"
  (あなたに癒しのキスを)







  東雲沙紀×南山彰の場合 終わり


 2016/5/27up
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