AfterStory～彼女と彼の話～
廊下の端にきて、姫川編集長は腕を組みながら壁によりかかる。

「で、相談したいことは何だ？締め切りの延長は受け付けないぞ」
「締め切りは間に合います。先程、私のスマホにヒデ子婆ちゃんから電話が来たんです」
「婆ちゃんがどうした？具合が悪いのか？」
「ヒデ子婆ちゃんじゃなくて、海斗さんが風邪を引いたんですが病院へ行かないらしくて、困っているそうなんです」
「んだよ…、ビビらせんなよ」

姫川編集長は、呆れ顔でため息をつく。

「姫川編集長、相談なのですが、明日は定時であがりたいです。勿論、印刷所に送る原稿を終わらせます」
「言ったな。終わらせなかったら、お前が担当する来月のページ数を減らす」
「はい。終わらせますので、お願いします！」

私は姫川編集長に深く頭を下げて、願い出た。
プライベートなことだから、ちゃんと仕事はやりきってみせる。

「分かった。戻るぞ」
「はい！」

私は頭を上げて、先にすたすたと歩く姫川編集長の後に続いて戻っていった。

今日は明日の定時であがれるように、原稿をすすめておこう。

明日は、海斗さんにお粥でも作ってあげようかな。
水分も必要だけど、ご飯も食べた方がいいよね。
後でお粥のレシピを調べて、家に行く途中で買い物しておこう。

頭の中で明日のことを考えながら、キーボードをひたすら打ち込むのだった。
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