AfterStory~彼女と彼の話~
昨日は終電ギリギリまで原稿を進めたおかけで、今日は定時であがれるようになった。

私は帰る支度をし始めて、姫川編集長に声をかける。

「姫川編集長、相談にのっていただいてありがとうございます。お先に失礼します」
「次は無いぞ」
「はい」
「……これ、渡しておく」

姫川編集長は引き出しの中から紙袋を出して、私に渡した。
手に持つと、重さ的に小さな箱のような気がする。

「これは何ですか?」
「アイツに渡せばわかる」
「分かりました、渡しますね。それではお先に失礼します」
「んっ」

私は姫川編集長から渡された紙袋を持って、四つ葉出版社を出てスーパーに立ち寄ってお粥の材料を買い、海斗さんの所に向かった。


宇ノ島駅に到着するとまだ雪が積もっていて、歩くたびに滑りそうになる。

「うわっ…」

なんとか踏ん張りながら、海斗さんとヒデ子婆ちゃんが住む家に到着した。
玄関が開くと、ヒデ子婆ちゃんがにっこりと微笑みながら出迎えてくれる。

「麻衣ちゃん、来てくれてありがとうねぇ」
「海斗さんの具合はどうですか?」
「まだ病院へ行こうとしなくて困ったわ」
「そうですか…」

私は玄関に上がり、海斗さんの部屋に向かう。

「海斗さん、入ります」

襖を明けると海斗さんは布団に入って、おでこにタオルをあてていた。

「来たのか…」
「喋らなくていいですよ」

辛そうに話す海斗さんを喋らせては駄目だから話さないように制して、私はスーパーで買った荷物と姫川編集長から渡された紙袋を海斗さんの傍に置いて座り、タオルを外して手を海斗さんのオデコに添えた。

「まだ熱いですね。明日は病院へ行きましょう?」
「嫌だ。ゲホッ…、横になっていれば治…るから」
「もう、漫画の展開じゃないんですから。明日は絶対に行かせますからね!!」

頑なに病院へ行かないと言い張る海斗さんに、私はカチンときて大きな声で反応する。

「今からご飯作りますから、ちゃんと食べて下さいね!あと姫川編集長からコレを渡して欲しいと頼まれたので、置いてきますからね」

私はスーパーで買った荷物を持って、台所に向かった。
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