AfterStory~彼女と彼の話~
食器が少ないのはしょうがないよねと思い、お椀を持ってお粥を注ぎ、お盆にお椀とスプーンと飲料水を入れたコップを乗せて寝室に入る。

「幸雄さん、お粥が出来ましたよ」
「あり…がと…」

幸雄さんはゆっくり起き上がり、私はお盆を寝室にある机の上に置くと、お椀とスプーンを持って幸雄さんの傍に腰掛けると、お粥を掬って息をふぅっと吹きかけて熱を冷ます。

そして総務課で話題にあがった恋人同士でやりたかったことを、実践する時がきた。

「幸雄さん、あーん」
「……」

幸雄さんは苦笑して照れながらも口を開いて、お粥を口に入れたら、もぐもぐと口を動かして、ゴクリと喉が動く。

「美味しいよ」
「良かったぁ」
「もっと食べたい」
「はい!」

ゆっくりとお粥を食べさせて、飲料水も飲みながら、幸雄さんは完食した。

「ご馳走さま」
「お粗末さまでした」

幸雄さんの顔色も良くなってきたし、この辺で帰ろうかな。

「幸雄さん、今日はゆっくりして寝てくださいね」

まだ完治はしてないし、無理させたくないからと、私は帰り支度を始めた。

「待って」
「えっ…、きゃっ」

幸雄さんに右腕を掴まれ、そのまま床にドンッと倒された。
頭は運良くクッションが受け止めてくれたから、強くぶつける心配はない。

「……」

私は見上げると、幸雄さんは真剣な眼差しで私を見下ろしている。

「幸雄さん?」
「……ないで」
「えっ?」
「帰らないで。今日は傍にいて欲しい」

幸雄さんの瞳は潤んでいて、帰らないでと懇願する表情に胸がくすぐったくなって、右手を伸ばして幸雄さんのオデコに触ると、まだ熱い。

「熱がまだありますよ?」
「平気。動いた方が汗が出るし」
「……」

にやりとする幸雄さんに、私は何も言えなくて。

「風邪、移ったらご免」
「んっ…」

キスを受け入れて、幸雄さんの首に腕を回した。
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