AfterStory~彼女と彼の話~
間取りは2LDKで、リビングのソファも海外製の物かと思えるくらいに大きいし、窓辺には観葉植物、オーディオもシックなデザインだ。

部屋はお洒落だけど、当の本人はオデコに冷却シートを貼っていて、歩くたびに足元がおぼつかない。

「ベッドまで付き添うから」
「すまない」

私は南山の背中に右手を添えて寝室らしき部屋に入ると、ベッドは大きめで、南山はドサッと横になったので、掛け布団をかけた。

ベッド以外に照明灯と本棚とクローゼットしかなくて、帰って寝るだけの部屋なんだなと分かる。

「病院には行ったの?」
「行ったけど、まさか熱がここまで出るとは思わなかった」
「何か食べれそう?」
「……お粥が食べたい」
「分かった。キッチンを借りるね」

普段は気難しい口調なのに、今は弱々しくてお粥を食べたいって呟く南山の姿に可愛いなぁと思いながら、スーパーの袋を持ってキッチンに向かう。

「キッチンも凄い」

流し台もコンロも綺麗だし、調理器具は最新物で、冷蔵庫も私が使っているよりも大きい。

「ニャァ…」

猫の鳴き声が聞こえ、足元に視線を向けると、三毛猫が私の足に頬を寄せていた。

 (この猫、あの時の…)

あの時というのは、数年前に雨が降り、傘を指さないでいた南山が猫を拾うのを目撃したことがある。

「あの時の猫だね」

私はあの時の猫だとわかると嬉しくなって、しゃがんで猫を撫でると、猫は顔をすりよせてくる。

ご飯を作らなくちゃいけないから、猫にはリビングに行ってもらおうかな。

「こっちで待っててね」

私は猫を抱き上げるとリビングのソファに乗せて、キッチンで料理に取りかかった。
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