AfterStory~彼女と彼の話~
俺は美空が事情聴取を終わるのを待つ為に、廊下の壁に寄りかかっている。

まさかこんな展開になるとは想定外だから、ホテルにはチェックインが遅れることを伝えて、通話を終えるとふぅっとため息を吐いた。

「水瀬先輩、どうぞ」
「南山、ありがとう」

南山が俺に缶コーヒを差し出して、2人でプルを開けて飲む。

「警察官になる夢を叶えたんだね」
「はい。今は、S県B警察署で刑事をしています」

南山は小学校のバスケ部の後輩で、入ってきた時から将来は家族のように警察官になるんだと豪語していて、本当に叶えたんだと俺は嬉しく思う。

「南山もあの映画館で誰かと来ていたの?」
「映画館で待ち合わせをしていて、俺が先に早く着いたんですよ。そうしたら、あの黒のジャンパーを着た男が袋いっぱいに持ちながら映画館をうろついてたんで、怪しいと思って職務質問したら抵抗したので取り押さえました。再犯らしいので、暫くは出てこないと思います」

南山は窃盗した男の顛末を話してくれた。

「そっか。南山のおかげで彼女の大切な荷物が戻ってきたから助かったよ、ありがとう」
「いえ…、警察官の仕事ですから」

南山は少し照れながら缶コーヒを一口飲むと、一人の女性が此方にきた。

「彰、遅くなってごめんね」
「いや、俺こそ来てもらってすまん。水瀬先輩、恋人の東雲沙紀です。沙紀、俺の小学校のバスケ部の先輩、水瀬さん」
「はじめまして、水瀬です」
「はじめまして、東雲沙紀です。私も南山と同じB警察署で、警察官をしています」
「そうなんですね、2人ともお似合いですよ」
「そう…、ですかね」

俺は褒めると、南山は照れ隠しの為か表情を固くする。

「幸雄さん、お待たせしました」

事情聴取の部屋から美空が出てきた。

「南山、東雲さん。俺たちは行きますので、今度四人で食事でもしましょう」
「水瀬先輩、こいつ大食いですから後悔しますよ」
「彰は黙って!」

東雲さんが拗ねながら抗議をしたのをみて、仲良くしてそうで安心した。

美空の大切な袋が戻ってきたからホッとして、俺たちは警察署を出ていき、タクシーをつかまえてロイヤルプラザホテルへ向かう。
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