古本屋のあにき
「あの事故は、お前のせいじゃない。いろんな不幸が重なっただけだ。な?」
 
 健はだれかにそう言ってほしかった。力が抜け、その場にへたり込んだ。
 
「健?」
 
涼介が健の手を握る。
 
その力強さにほっとして、涙があふれた。一度あふれたら止まらなくなった。
 
本棚の本を上から出していけばよかった……。トイレなんかあとから行けばよかった……。あんなところに脚立を出しっぱなしにしなければよかった……。もっとあの女の子のことを……ちゃんと見てあげてればよかった……。
 
「……泣くなよ」
 
 健は返事もできず、涙が止まるまで泣き続けた……。
 
 気が付くと、涼介が健の頭をなでているので、ちょっと恥ずかしくなり、涙を拭いて顔を上げた。
 
「泣いてねえし」
 
「うそつけ!ひっでぇ顔」
 
「うるせえよ。あ、そういえば、バイト代貰ってないけど?」
 
「ああ、時給200円だったっけ?」
 
「だから、また下がってるって!」
 
病室に笑い声が響いた。
 

         おしまい
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