星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

5.報告から始まるケジメ-託実-



六月。

百花にプロポーズをしてから、
俺の周辺は慌ただしくなった。



「託実様、こちらの部屋の間取りですが……」

「あぁ、キッチンは対面キッチンの方がいいな。
 収納が多い方がいいから、パントリーも作って貰えると百花が喜ぶ」

「かしこまりました」

「託実様、こちらの部屋の壁紙はどういたしますか?
 壁紙の一面だけのカラーを変えることも可能ですが……」

「壁紙は四方統一のほうがいいだろう」

「では、そのように手配します」


プロポーズの翌日、裕真兄さん経由で
話に出たマンションの一室を買い取った俺は
退院後の百花との新生活に向けて、
急ピッチでマンション内の内装工事などを進めていた。


リノベーションっと言われる工事の真っただ中。


「それでは、また何かありましたら連絡ください。
 少し出掛けてきます」

「かしこまりました」



マンションを後にして、エレベーターで一回に降りると
俺はそのまま事務所に顔を出して、夕方まで仕事をする。

その後は、百花の病室に顔を出す。


「託実、お疲れ様」

「ただいま、百花は調子はどう?」

「もう少ししたら退院出来るかもしれないって
 今日、裕真先生が言ってた。

 五月に比べると大分痛みもなくなってきてるし」

「そっか……。
 順調に回復してるなら安心だな」

「今日も少し前まで唯香と雪貴くん来てくれてたんだよ」

「雪貴と唯ちゃんは、マンションのスタジオでのAnsyalの練習時に
 会うな」

「Ansyal、練習してるんだ」

「練習って言うか、出来る奴から順番に集まってるって感じかな」

「私も……行ってみたいな……」

「退院したら連れてってやるよ。
 んじゃ、俺明日……大切な日だから」

「大切な日?」

「百花の家族に、正式に挨拶に行って来る。
 喜多川家の本宅で、10時に約束してる」

「……託実……」


百花は俺の名前だけ読んで、
そのまま俯く。

俯いた先に視線を向けると、ポロリと零れ落ちて染みをつくる涙。
その涙を指先で拭ってやると、アイツの暖かい涙が指先に雫を作る。

< 198 / 253 >

この作品をシェア

pagetop