星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

4.迷路の中で -託実-


GWにセッティングしたLIVEとサイン会以降、
高校生の雪貴の中間考査に配慮して、
スケジュールを3週間ほど空白にしていたAnsyal。



だけどその予定は、昨夜の一本の電話によって
急きょ臨時のシークレットLIVEが決まった。


【霞ヶ丘】と俺たちが呼んでるその場所は、
Ansyal結成時から幾度となくお世話になり続けたLIVEハウス。

そのLIVEハウスが誕生したのが5月18日。


毎年、この日にマスターが声をかけて行われる
お祭りLIVE。

直前まで、今年は声がかからなかった俺たちに、
急きょ、マスターから俺の携帯に連絡が入った。



『託実くん、悪いが明日の夜、10分でも20分でもいい。
 都合つけて貰えないか?

 Ansyalが忙しいのは俺も自覚してるんだけどな。
 明日のLIVE、あるボランティア団体からの招待で車椅子の子が来るんだ。

 もうすぐ治療の為に渡米が決まっている子で、
 お前さんたちの演奏が好きなんだと。

 その子を喜ばせてやりたいんだけど……力を貸して貰えないか?』


そう言って告げられた車椅子の女の子と、
理佳の存在がシンクロする。

メイク・ア・ウィッシュと言う団体を通して、
夢を叶えることが出来た理佳。


俺たちが……、
俺が誰かに生きる力を与えられるなら
嬉しいと思えた。


「わかりました。
 
 事務所の人間とメンバーに急きょ連絡して、
 折り返し連絡します」


マスターとの電話を切って、
叔母さんの楽器屋の地下スタジオを後にする。

そのまま楽器屋のフロアーからエレベーターで最上階へ。



俺たちAnsyalが、
所属する事務所の扉をゆっくりと開いた。

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