星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「羚と一緒にやってみない?
 共同プロデュース」


そんな宝珠姉の一言から、俺の2ヶ月のスキルアップ期間の仕事は埋まっていく。



10時前後に起床して、事務所に顔を出しそのまま地下に潜って黙々と作業を続け、
声がかかれば事務所に所属してる他バンドの練習に顔を出し、
自分の練習にスタジオに籠る。

太陽の光を殆ど浴びずに籠り続けて、
時折、他バンドからの招待チケットを手にLIVEに顔を出す。

打ち上げやら食事会やらに顔を出して、
明け方近くに自宅マンションに帰宅して、また昼前に出掛ける。

そんなスケジュールをこなしながら生活しているうちに、
理佳の命日から、2週間が過ぎようとしていた。




理佳の命日。

アイツが眠り続ける墓地の駐車場で再会した百花ちゃん。
動揺しなかったと言ったら嘘になる。

だけど……百花ちゅんの姿を見ただけで、
嬉しさを感じたのも俺自身で、それと同時に理佳への罪悪感も芽生えた。


理佳と最初に出逢った頃、
アイツが俺に見せた、全てを諦めて寂しそうに笑った
その顔が何度も何度もチラつく。


百花ちゃんと駐車場で別れて、アイツの墓地へと向かうと
すでに家族が来て手入れしていったのか、
アイツのお墓は草一つ生えていない綺麗な状態だった。



百花ちゃんは理佳の家族?
だから……俺の中で二人の姿が重なるのか?


そう思いながら問いかけるも、
百花ちゃんの返答に核心に迫れるものはなかった。



その寺には沢山のお墓が並んでいる。
百花ちゃんの大切な存在が、理佳を示す確証は何処にも存在しなかった。



だけどそれと同時に……、
百花ちゃんが理佳の家族だと仮定して……
俺はこの後、どうしたいんだろう?


百花ちゃんに惹かれていくこの気持ちを
抑え込んで、理佳だけを愛し続けることは出来るだろうか?


あの頃の俺が知ることのなかった、
理佳と出逢った頃とは違った感情が今の俺の中には渦巻いてる。



『なぁ~理佳。
 俺、もう一度誰かを好きになってもいいか?』


救いを求めるように、許しを請う様に
アイツのお墓で問いかけてみるものの、俺に答える声は存在しない。







命日の日から何度目かの夜を過ごしながら、
その夜も、眠りの中で命日の日の夢を見る。


理佳が寂しそうに笑う横顔が、
今も俺を絡め取っていく。


生暖かくなってる室内。

エアコンのスイッチを入れて、
その間に浴室へとシャワーを浴びに向かう。


罪悪感を洗い流すように、
シャワーを終えて戻ったリビングの片隅、
今も預かりっぱなしになってた、
シンデレラの忘れ物が視界に入った。



本当はあの日、買い物した画廊に
百花ちゃんの名前で、郵送することも可能だった。


だけど郵送すらせずに、
今も俺の部屋に置いたままになっているのは、
何時かこれをきっかけに、
彼女ともう一度ゆっくり逢ってみたかったから。


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