世界一遠距離恋愛
「こんな真夏にスーツなんて…暑くて仕方が無いわね。…絵理子は良いわね、比較的薄着で。」
「いやぁ…頼まれればスーツ着たんだけど…。」
「ふふっ、透もきっと多少可愛い絵理子が見たかったはずだからそのくらいが丁度いいのっ。」
…花奏とあたしは葬儀場の屋上で風に当たっていた。透のお願いを聞いてあげるために、特別に開放してもらったのだ。
「…さすがに全部を粉にするのは無理よね。」
「相当な量になっちゃうじゃん。無理に決まってるよ。」
透が花奏の遺書に残したお願い事。

俺が死んだら、骨は空からばら撒いてくれ。俺、自由になりてぇんだ。

あたしが遺書を読んでいる間に、葬儀場の人が一部粉末にした透の骨を届けに来てくれたみたい。あたしは全然気が付かなかったけど。
「…空じゃないけど、高い所だし良いよね?」
「うん。透は…学校とか病院とか、至る所の屋上が好きだったもん。きっとこれだけ高い屋上も気に入るんじゃないかな。」
花奏は笑っていた。…あたしも今は笑顔が込み上げてくる。ここで寝そべっている透の幸せそうな顔を想像して。
「…いい?ばら撒くよ?」
「うん!」
あたしの返事を合図に、花奏が持っていた小さい和紙を広げた。白くてサラサラした透の骨は、風に吹かれてあちこちに飛んで行く。

「…さよなら。あたしの愛した人。」
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