無理して笑うな

「え。じゃあドラマの撮影でたまたま幼馴染みと再開ってことになるな。唯、平気だった?」




斗真は仕事モードから解放されると、呼び方がリーダーから唯に変わる。




「ん?平気って何が?」




あたしはさっきのスタンバイの時間に何を考えていたのか斗真に追求され、大人しく白状していた。




「コンサートの時とか、その悠斗に会ったことで塞ぎ込んじゃってたじゃん。

今回は平気だったの?」




…そう言えば




そんなこともあったなぁ……




「んー、なんだろうね。

今回はそんな思わなかったなぁ。免疫着いたかな?」




あたしはそう言って笑って見せた。




でも斗真はあたしをじっと見つめると、片付ける手を止めてあたしの真正面に座った。




「……また、無理して笑ってる。」




斗真の大真面目な視線がじっと見つめてくる。



そこまで真面目に言われると、こっちもふざけて流すことが出来なかった。




「…もう、これは癖だよ。直せないよ。」




直そうとも、思わないんだけど



リーダーのあたしが笑ってなくちゃ、このチームの雰囲気はどうなるか



今よりずっと悪くなるに決まってる。




「直せないことぐらい分かってるよ。でもせめて、俺の前では我慢するなよ。」




あたしは見ていられなくなって斗真から視線を逸らした。








「…俺じゃダメ?」





「え?」




だけど、その言葉でまた視線を戻すことになった。




「俺じゃダメかな?俺は悠斗みたいに、無理に笑わせたりしないよ。心から笑わせてみせるよ。」






だって、俺は唯のことが好きだから。







斗真はそう付け加えてすぐ、俯いた。





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