無理して笑うな
〈悠斗said〉
知ってる。
分かってる。
「お前なぁ、せっかく会えたのになんでそんな態度とるんだよ。」
悪いことぐらい分かってる。
「唯ちゃん、寂しそうに見えない?うわぁ可哀想だなぁ。誰かさんのせいだな。」
でも、こうなったのはちゃんと理由があったからで。
「…お前が話しかけないんだったら、俺が休み時間の間もずっと唯ちゃん捕まえとくけどそれでもいいの?」
「あーもー!拓真うるさい!」
俺は気づけばそう叫んでいた。
ただでさえ頭の中は唯でいっぱいなのに。
これ以上なんて、たまるか。
「…どうしたんだよ。なんであんな冷たい態度とるのか教えろよ。
お前が唯ちゃんをまだ好きなことぐらい見てたら分かるんだからな。」
拓真にそう言われたところで、答えられるわけない。
…拓真と唯が両思いっていう、ドラマの設定に嫉妬してることなんて。
もちろん両思いなのは陸と桜であって、拓真と唯ではない。
そんなこと知ってる。
だけどそれを演じているのは2人であって。
撮影初日から2人が急接近してることはドラマ関係者なら誰でも承知だ。
「あ、もしや僕達が共演してることに嫉妬してるな?」
「う。」
胸にグサッと刺さった言葉の続きはケラケラと笑う声だった。
「それは仕方ない!諦めて。」
「ああ、諦めてるよ!だけど今日の撮影って最後の場面だろ?
ほら、陸と桜が…キス…するやつ…」
どんどん小さくなっていく言葉に自分でも嫌気がさす。
「キスって言ったってフリだよ。本当にするわけないじゃん。」
拓真はまだケラケラ笑ってる。